主日礼拝メッセージ(赤文字をクリックするとメッセージが聴けます。MP3ファイル)

使徒の働き27:9-44 「人生の海のあらしに」  齋藤牧師

【今週のみことば】
「元気を出しなさい。あなたがたのうち、いのちを失う人は一人もありません。失われるのは船だけです。」(使徒の働き27:22)

【礼拝メッセージ要旨】

ローマ皇帝のもとで裁判を受けることになったパウロは、カイサリアの港から船に乗せられてローマを目指しますが、その航海の途中で突然の嵐に見舞われます。彼らはその試練をどのように乗り越えたでしょうか。

1)カイサリアからクレタ島へ
一行はカイサリアを出航し、アジア沿岸を西に向かい、リキアのミラの港で別の大きな船に乗り換えます。イタリアとローマを結ぶ大きな商船であったようです。しかし、強い西風のためになかなか進めず、やむなく進路を南に変更して、クレタ島の南岸の「良い港」までたどり着きます。時は10月に入り、航海には危険な時期に差し掛かっていました。

2)突然の嵐
そこでパウロは、主だった人たちに、ここに留まって冬を過ごした方が良いと警告します。しかし、責任者であった百人隊長は彼の言葉を無視し、船長らの方を信用します。また、他の多くの者たちからはクレタ島の西側にあるフェニクスで冬を過ごした方がいいという意見が出され、それを後押しするかのように一時的に状況が好転し、フェニクスに向けて出港します。彼らはパウロの忠告を聞こうとせずに、自分たちの都合や大勢の意見、それに、そのときの状況の方を優先させてしまいました。私たちも、そういうことはないでしょうか。
ところが、間もなくユーラクロンと呼ばれる暴風が陸から吹き降ろしてきました。「突然の嵐」に見舞われて、船はあっという間に沖に流されてしまいます。人々は、吹き荒れる暴風の中で、とにかく船が沈まないように懸命に努力します。積荷を捨て、船具を捨てますが、それでも嵐はやみません。「太陽も星も見えない日が何日も続き」、「もう助かる望みも、今や完全に絶たれようとしていた」(20)絶望的な苦しい状況に置かれてしまいました。

3)パウロの励ましにより
「元気を出しなさい。あなたがたのうち、いのちを失う人は一人もありません。失われるのは船だけです。」(22)この希望の見えない状況にあって、パウロは人々を励まします。神様の約束としての、確信に基づいたことばです。パウロは、この状況の中に置かれても決して悲観することなく、神に祈っていました。「あなたはローマでも証しをしなければならない」という神の約束を信じて、祈り続けていたのです。神は、そんなパウロの祈りに答えられました。この言葉に人々は励まされ、一筋の光を見出します。
漂流から14日目の夜になって、水夫たちは、船がどこかの陸地に近づいているようだと察知し、自分たちだけで逃げようと小舟を降ろそうとしますが、兵士たちに阻止されてしまいます。パウロは人々を励まし、食事をさせて、上陸に備えます。しかし、直前で船が座礁してしまい、囚人たちが逃げないように兵士たちから殺されそうになりますが、百人隊長が収めます。そうして、276人全員が無事にマルタ島に上陸を果たすことができました。パウロが告げた通り、一人のいのちも失われなかったのです。

4)困難の中でも神の約束を信じて神に信頼する
私たちも、人生の中でこんな嵐に見舞われることがあるのではないでしょうか。そんな時、私たちはどうすればいいのでしょう。そこで最後に、この出来事を通して教えられることとして、3つの点に目を留めたいと思います。

一つ目のことは、「困難の中でも、神の約束を信じて神に信頼する」ということです。パウロは、この絶望的な状況の中でも決して望みを捨てずに、神の約束のことばを信じて、神に信頼していました。そして、祈り続けていました。私たちに対しても、神様は約束を与えてくださっています。「わたしはあなたとともにいる。決してあなたを見捨てない。」という、力強い約束です。どんなに苦しい状況の中でも、私たちの造り主である全能の神様が、私たちのことをいつくしんで一緒にいてくださいます。私たちも、パウロのように、どんな困難の中に置かれても神様に信頼して、そこに希望を置いて、祈り続けてまいりたいと思います。

5)困難の中でも自分にできることがある
二つ目のことは、「困難の中でも自分にできることがある」ということです。船が暴風に翻弄され流されるままになっても、人々は手をこまねいていたのではありません。必死に自分たちにできることをしていました。積荷を軽くし、船が沈んでしまわないように懸命に努力しました。もうだめか、と思えた時には、パウロが立ち上がって彼らを励ましました。そこに希望を見出して、あきらめずに海の状況を見張り、水深を測りながらチャンスを待ったのです。そのように、どんな困難の中にあっても、自分にできること、なすべきことがあるのではないでしょうか。神様は、「今、あなたのなすべきことは何か?それをしなさい。」と言っておられるように思います。もちろん、神様に信頼して祈ることができます。そして、具体的に、自分にできることがあるはずです。神様は、そのための知恵と力を与えてくださいます。

6)失ってはならない本当に大切なものがある
三つ目のことは、「失ってはならない、本当に大切なものがある」ということです。この嵐の中で、人々は多くの物を失いました。それでも、本当に大事なものは失われずに済みました。「いのち」です。聖書は、永遠に続いていく「いのち」があると言っています。それは、「神様との関係に入れられること」です。救い主イエス・キリストを受け入れることを通して、造り主である神との関係に入れられること、神の子どもとされることです。この嵐の出来事は、私たちに、「あなたにとって、本当に大切なものは何か?」と問いかけているようにも思います。困難の中で、自分にとって大事だと思っているものが失われることがあります。それでも、決して手放してはならない、大切なものがあると思います。それは、「神様との関係」です。神様につながり続けていることです。これさえしっかりと握りしめていれば、どんな困難の中に置かれても、立ち続けていられるのではないでしょうか。(マタイ16:26)

人生の嵐の中でも、神様は私たちを決して見放さず、励ましを与え、知恵を与え、脱出の道を備えてくださいます。どんな困難の中にあっても、このお方に信頼を置いて祈り続けてまいりましょう。そして、そこで自分にできること、なすべきことを精一杯果たしていきたいと思います。